絵本の写真

_00B6430.jpg

4月24日に日帰りで東京へ行ってきた。
出版社に伺い、編集者の方と写真絵本の原稿の打ち合わせをした。

これからまだ全体の構成や、細部の詰めを考えねばならない。
いろんなことが頭の中をまわっているが、
うれしかったのは、ぱっとみて劇的な写真が絵本のなかで使われるとはかぎらないこと。
なんとなく気づいてはいたけれど、「そうだそうだ」と自己肯定を強くして帰って来た。

それにしても本づくりは構想も取材も執筆も時間がかかる。
何冊も素晴らしい本を出版しておられる有名写真家の活動を思うとき、
率直に「すごいな」と思うのである。

写真は富良野に帰ってきてから撮った、
冬の間、雪の下でネズミが食ったと思われるクルミの殻たち。

写真の方向

_00A6040-Edit.jpg

どんな写真がいい写真なんだろう。
被写体である自然や風景や人物のもつストーリーを表す写真。
撮影者の思いを伝える写真か。誰かが「いいね」って喜んでくれる写真?
それとも撮影技術を誇示するための写真か。

子ども向けの写真絵本の原稿を書いたり、親子で参加する自然観察会の講師役をしているうちに、
撮り方や、撮らなければならない写真の方向が今頃になって見えてきた。
上手で構図もきまっている写真が、伝わる写真になるとは限らない。
どんなコンセプトでなぜそれを撮ったのか、
言葉でちゃんと説明できる写真が、ぼくにとっては今は何より大切。

それは感性を無視して、頭でっかちの撮りかたをしている、というのとはまた違う。
人や自然の歴史を知り、よく考えて、そこに解釈と感性を重ね合わせていく。
リサーチ、撮影、アウトプット。
なにか科学論文を書くのに、下調べして、実験や観察によってデータを得て、書き上げる作業に似ている。
だから撮影はなにかをつくりだすときの、ほんの一部分にすぎない。

撮影よりももっと大切なのは、何かに気づいてそれを広げ構築していくちから。
そのためにいろんな人や分野とのかかわりも大切になってくる。

お話と絵と写真

_00B1746.jpg

昨日、札幌で酒井広司さんの写真展「写真のなかの時間-室蘭・母恋 昭和51年ほか」にお邪魔した。
30年ほど前に撮影されたモノクロ40点。
酒井さんも会場にいらして、こんなことをおっしゃっていた。
「撮るときは高校生。ただ撮りたくて撮っていた。でも30年を経て再度撮影されたものを見てみると、
時間が経つことで写真のなかに現れてくるものがある。」と。

写真は目の前の現実からしか出発できないのだろうか…。帰りの車を運転しながらずっと考えた。
写真絵本を構成していく作業においては、まずお話があって、その流れにそって写真を撮影したり、
すでにあるカットをあてはめたりする。
しかし写真は絵と違う。
たとえお話が創作であっても、写真はどこかの現実を切りとらなければならない。
だから絵本は「絵」が多いのだろうか。
改めて大型書店の絵本売り場を見ると、写真が扱われているものはほんとうにごくわずかだ。
子どもたちになにか伝えようとするときの写真のちからはどこにあるのか。
現実のカタチと光の向こうに、自然が内包する物語を伝えられるだろうか。

富良野原野の夕暮れ

_00A4875.jpg

夕暮れの空。ヨシの穂。芦別岳の山並み。
たぶんこの組み合わせは盆地の開拓前から変わっていないのかもな、と思いながらパチリ。
でもヨシの向こうにはうっそうと茂る森があっただろう。

産業遺産や戦跡の写真が、過去の繁栄や悲惨を伝える手段だとしたら、
失われてしまった森や自由に曲がりくねった川の面影を伝えるのはどんな写真だろう。

撮るという行為は「今」しかできない。
オオカミが吠えていた時代へ戻ることはできないのだ。
でも過去や未来への想像を豊かにしてくれるような写真を撮ってみたい。

撮る前の時間

_00A3617c.jpg

「シャッターを切る前にいくつのことに気付けるかが勝負だ」と、
先輩写真家のI氏はブライダル撮影を例にとってそう言っていた。

自然写真もそれ以外の写真もそれは同じと思う。
光の質・向き。ピントはどこか。ピントを合わせないところはどこか。
背景は。前景は。構図は。カメラは。レンズは。感度は。絞りは。シャッター速度は。

そしてそれらの技術的なことの前提になっているのは、
何を知っていて、何に価値観を置き、何を伝えたいかということ。
もしくは仕事として、なにをクライアントに要求されているか。

シャッターを切る前の時間。
ほんの数秒前かもしれないし、数年前かもしれない。
撮影と同じくらい大切な時間。

(写真は富良野市にある鳥沼公園。ブログの写真を大きくしてみました)

プロフィール

石黒誠の写真と活動を紹介するブログです。

Makoto Ishiguro

Author:Makoto Ishiguro

カレンダー

08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

メールフォーム

ブログの感想・お問い合わせはこちらまでお願いします。

名前:
メール:
件名:
本文: